当館では2016年1月5日から「ポジション2016 アートとクラフトの蜜月」という展覧会を開催する予定ですが、このタイトルにある「アート」、そして「クラフト」という言葉、かなり曖昧です。
まず、「アート」ですが、これは、「芸術」とどう違うのでしょうか?アートというと、絵画や彫刻や現代美術や、そういったものもアートですが、イラストやデザインもアートであり、工芸も「アート」ともいえるし、といった具合です。現在の認識では、クラシック音楽家からロックミュージシャンまで、「アーティスト」と呼ばれますし。
少し前に愛知県美術館でビデオ作品を展示していた伊東宣明さんによれば、「アートとは、見えないものXに向かうもの」そして、「誉められたいとか売れることを考えて作った物はアートではない」「ジャンルは関係ない」とのこと。
さて、どうなのでしょう?
次に「クラフト」ですが、これは、「工芸」とどう違うのでしょうか?「クラフト」もまた、「工芸」と比べると、範囲が広いように思います。「工芸」というと伝統工芸に近いものをイメージしますが、「クラフト」はもう少し身近なものを含む感じ、でしょうか・・・。
そして「アート」と「クラフト」の境界も、現在では曖昧になって来ているところがあります。
「ポジション2016 アートとクラフトの蜜月」では、そのあたりの曖昧なところを、そのままお見せしようかと思います。「アートって何?」「クラフトって何?」と考えるきっかけになれば、面白いなあと思います。
ところで、前世紀転換期のウィーンでは、アートとクラフトが融合したといえる作品が生み出されました。「ウィーン工房」と呼ばれる組織がそれらを制作、販売していたのです。
ウィーン工房の椅子の写真をご覧下さい。これは、
アートでしょうか?
芸術でしょうか?
クラフトでしょうか?
工芸でしょうか?
<写真>:コロマン・モーザー 《アーム・チェアー》 1903年頃
あるいは、そんなことは、どちらでもよいことなのかもしれません。
しかし、ちょっと考えてみると、何か気づくことや発見することもあるかもしれません。
現代の作品を見ても、同様に、アートとクラフトを巡っていろいろなことを考えられるのではないでしょうか。
投稿者:akko